2013年4月21日日曜日

Appleの広告に使われる文字の思想

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どことなく、ぎこちない。そこが狙いだと思う。


今日は新宿をぶらーりしていたんですが新宿西口地下広場はiPadの広告でジャックされており、至る所にiPadとiPadminiが宣伝されていました。Apple製品といえば無駄を削いだ非常にスタイリッシュなデザイン……ですが、そこに使われている文字は果たしてどうでしょうか。今日はそこに迫ってみます。


キャッチコピー付きの広告の写真を撮らなかったのと、別に今回の広告に限ったことではなく、どのAppleの広告に言えることなので、この記事ではAppleのサイトある画像を見てみます。


見るからにAppleらしいコピー。

でもよく見て。この文字、フォントを。どうってことのないゴシック体ですが、見ていると少し不安になりませんか?特にひらがなのあたり。

Appleの広告に使われている文字は「Myriad Pro」+「ヒラギノ角ゴシック Pro」で有名ですが、この角ゴシックはゴシックと言えど、やや文字にアクセントがあったり丸みがあったりして、フォントのモリサワが言う「隷書の筆法の名残を思わせるようなわずかな太細があるオーソドックスなゴシック体」*1であるといえます。

ではオーソドックスなゴシック体に対するものは何かというと、それはモダンスタイルのゴシック体。こちらは「まるでコンパスと定規で描いたように等幅に近い幾何学的な線」*1が特徴の文字。どこにでもあるサインに用いられています。

ではこのコピーをモダンスタイルに属するモリサワの新ゴに置き換えてみたいと思います。


どうでしょう。こっちの方がスタイリッシュで見やすいんだけれど、何かが違います。


文字を比べてみました。上は私の作った新ゴ、下はもとからあるヒラギノ角ゴ。モダンスタイルなゴシック体は「見せる」のに対して、オーソドックスなゴシック体は「読ませる」ことに比重があるそう。*2

私が見ていて感じる「ぎこちなさ」というのは、その「読ませる」というところにヒントがあるのかも知れません。スティーブジョブズは大学時代カリグラフィに魅了されたようで、Appleがフォントにこだわる理由というのはその経験にあるみたいです。あえて「見せる」ということをしないのは、ジョブズの思想なのかもしれませんね。


*1 「文字は語る」モリサワ株式会社発行 p.20 「ゴシック体のバリエーション」 l.12-19
*2 同上 p.20 「ゴシック体のバリエーション」 l.20-23

1 件のコメント:

  1. OS内ではヒラギノ角ゴがよく使われるますが、
    広告の和文フォントはAXISだと思います。

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